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家電量販店が台頭してきた歴史

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一般家庭に広く普及している家電製品。その販売は全国各地にある『家電量販店』が、多くの品揃えと安さを武器にシェアを占めています。
 
この家電業界の量販スタイルが出現した歴史はまだ浅く、現在名を馳せている家電量販店は創業者が今なお経営に参画しているところさえあります。
 

 

従来の家電販売スタイル

 
そもそも家電製品が一般家庭に普及し始めた頃は、いわゆる『パパママショップ』と呼ばれる個人経営店が販売し、設置・取付・メンテナンス・修理まで請け負うのが普通でした。
 
当時の家電製品は定期的なメンテナンスが必要な物も多く、消費者は近所の電器屋さんとの付き合いが欠かせない時代。家族代々にわたって地域の電器店を贔屓(ひいき)にし、末永くお付き合いするという商慣習でした。
 
電器店も地域住民との繋がりを大切にし、適切な販売とメンテナンスを一手に引き受けるというスタイル。ときには電話1本で電球の交換をしに行く、という光景も珍しい事ではなかったようです。
 
業種は違いますが、町のかかりつけ医のような存在と言い換えれば分かりやすいかもしれませんね。その当時は家電製品の種類も少なく高価でしたから、専門家にお任せというのが一般的だったのでしょう。
 
お客様が電化製品を選んで購入するのではなく、むしろ電器屋さんが各家庭事情に合った家電製品を提案するという時代です。今のように他店と価格を比べて購入するなど考えも及ばなかったでしょう。
 
それがいつしか量販店があっという間に全国規模で出店し始め、個人経営の電器店は姿を消していきました。
 
 

なぜ家電量販店が台頭してきたのか

 
家電量販店が増えた理由の1つに、製品の種類が豊富になった事が挙げられます。個人経営の店舗では品揃えに限界があり、また在庫リスクを抱えられないといった事情もありました。
 
同時に家電製品は、一個人で所有する物が増えていった事も挙げられるでしょう。
 
生活必需品と呼ばれる製品以外にもラジオやオーディオ機器などが普及し、家電製品を『家庭で所有』するのではなく『個人で所有』する時代になりました。
 
その頃『価格』による差別化を打ち出した電器店が出現し始め、徐々に勢力を大きく伸ばしていったのが現在の家電量販店です。
 
 

メーカーと販売店の立場が逆転していった歴史

 
家電量販店が台頭してきた大きな理由がもう一つあります。それは量販店の『販売力』が大きくなり過ぎたことです。
 
先に述べたように、もともと家電製品は個人経営の電器屋を通じて供給されていました。
 
当時は家電メーカー主導の系列仕入れで、『ナショナルショップ』はナショナル製品、『東芝ストアー』は東芝製品中心の品揃えという具合です。どちらかといえば製造メーカーの威光に従いながら経営していたのですね。
 
一方で現在の家電量販店のように様々なメーカーを同時に取り扱う店は『混売店』と呼ばれ、メーカーからは疎(うと)まれる存在でした。
 
他社の製品と横並びにされて『安売り』している姿が気に入らなかったのでしょう。仕入れを制限されたりといった肩身の狭い思いをしながら商売をしていたようです。
 
しかし、家電製品が安売りされるという行為がタブーだった時代において、混売店のスタイルは消費者に歓迎されました。系列店(特約店)とは比較にならないほど数多くの製品を販売し、勢力を拡大していったのです。
 
そうなると各メーカーも混売店の販売力は無視出来ません。最初は否定的だった各家電メーカーも、徐々に混売店とのパイプを太くしていったのです。
 
いつしか混売店の販売力はメーカーにとって欠かせないものとなりました。そうしてメーカー主導の家電流通は終わり、次第に量販店主導の販売へと変わっていったのです。
 
 

 

家電ブーム到来

 
昭和20年台後半〜40年台にかけての日本は高度成長期と呼ばれ、家電流通業界にとっても追い風となりました。
 
一般家庭には多くの家電製品が供給され、製造すれば右から左へと売れていく時代。当然ながら販路を拡大していくにあたって従来の特約店だけでは供給が追いつかず、混売店の存在はますます大きなものとなります。
 
首都圏では秋葉原を中心に『石丸電気』『サトームセン』『ラオックス』が台頭していくなか、地方都市ではYKKと呼ばれた『ヤマダ電機』『コジマ』『ケーズデンキ』が勢力を拡大。また西日本を中心に、『ベスト電器』『エイデン』『デオデオ』など多くの電器店が各地でオープンしていきます。
 
こうして競合しながらも互いに売上を伸ばし、やがて『家電量販店』と呼ばれるビジネスモデルとして定着していきます。いわば『はみ出し者』であった混売店が、皮肉にも一大産業を生み出した格好となったのです。
 
 

目まぐるしく変わる勢力図

 
わずかな期間で大きな産業となった家電量販店ですが、その短い歴史のなかで勢力図は大きく塗り変わることになります。
 
かつては秋葉原の顔であった電気店の看板は次々と消え、『ヨドバシカメラ』や『ビックカメラ』など超大型店が存在を大きくしていきます。
 
ロードサイド型と呼ばれる地方発の家電量販店は、長きにわたって『ベスト電器』が業界1位の座を守ってきましたが、1997年に『コジマ』が追い抜きます。そして2002年には『ヤマダ電機』がトップの座を奪い、現在に至っているのです。
 
トップ争いと同時に再編も目まぐるしく、かつて栄華を誇っていたベスト電機はヤマダ電機の子会社となり、コジマもビックカメラの子会社となりました。
 
また現在では業界3位のエディオンですが、実はエイデン・デオデオ・100満ボルトなど多くの家電量販店が合併することで発足した家電量販チェーンです。
 
このように業界全体が短期間でせめぎ合ってきたことも、『北関東家電戦争』なんて言葉が派生した原因となっているのでしょうね。
 
 

新たな勢力争い

 
そして最近では、また別の大きな勢力によって舞台が変わろうとしています。家電流通市場は、EC市場の拡大によって『Amazon』をはじめとするネット通販に脅かされているのです。
 
もちろん家電量販各社も参入していますが、EC市場においては早くも明暗が分かれつつあります。本題から逸れてしまうのでここでは深く触れませんが、実店舗の市場とEC市場とでは勢力図が大きく違っているのも家電量販業界の特徴と言えるかもしれません。
 
アメリカでは、かつて家電量販業界で1位だった『サーキット・シティー』が経営破綻に追い込まれました。これもEC化への波に耐えられなかったことが一要因とされています。
 
アメリカと日本では土地柄も違いますが、家電流通業界はEC化の影響を受けやすいと言えるでしょう。最近では取り扱い商品の多様化や、経営の多角化に乗り出している家電量販企業もありますが、この先も勢力図が変わる可能性は大いにありそうです。
 
前述のように短期間で大きな存在へと成長してきた家電量販店ですが、その勢力が入れ替わる様はまるで戦国時代を生き抜いてきた戦国武将を見ているようです。
 
高度経済成長の時代を生き抜いてきた家電量販店が、この先のEC化時代ではどんな勢力争いを見せるのか、まだまだ予断を許さない状況と言えるでしょう。
 
 
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